薬膳料理

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薬膳とは中医学理論に基づいて、食材と生薬(中薬)を組合せた料理のことです。即ち、食べ物にも薬草にも、私達の体に様々な影響を及ぼす成分が含まれていますが、この成分を上手く調和して、日々の暮らしの中に取り入れることにより、健康な毎日を送ることのできる料理のことです。例えば、冷え性は血管の収縮や弛緩を調整する働きの不調から起こるため、これらを改善する成分を含む食品を摂ることが薬膳の考えかたになります。

医食同源(いしょくどうげん):日頃からバランスの取れた美味しい食事をとることで病気を予防し、治療しようとする考え方のことです。中国には薬食同源という言葉がありますが、薬というと生薬だけでなく、化学薬品も含まれるので、誤解を与えないように、臨床医・新居裕久氏が1972年にNHKの料理番組『きょうの料理』の特集「40歳からの食事」において発表したものです。

未病(みびょう):中国最古の医学書である黄帝内経で「聖人は既病を治すのではなく、未病を治す」と未病という言葉が使われています。既病(きびょう)とは、既に発病したことを言い、未病とは発病する前の状態を言います。日本未病システム学会では「自覚症状はないが検査では異常がある状態」と「自覚症状はあるが検査では異常がない状態」を合わせて「未病」と定義し、「自覚症状もあり検査でも異常が認められる状態」を病気(既病)と呼んでいます。
病気になってからあわてて医者にかかったり、薬を飲むのでなく、未病の状態のときから、医食同源の考え方を取り入れて、病気にならないようにバランスの良い食事をとったり、適度な運動をすることが大切です。

陰陽五行:中国の春秋戦国時代ごろに生まれた思想です。
すべてのものに陰と陽があり、更に、五行(5つの要素)があり、その関係と調和が大切という考えです。食べ物や体には陰陽があり、味覚、季節、体の臓器に五行があり、それぞれの特性や働き、体調などを考慮したのが薬膳料理です。
五気:食薬を「熱、温、涼、寒」に分け、「熱、温」は身体を温める作用、「涼、寒」は身体を冷やす作用があります。どちらも属さなく、穏やかな働きを持つものを「平」といいます。このように食薬の持つ性質を知っておくことは大切です。基本的には夏野菜などの食材は身体を冷やす作用があり、秋・冬の食材は身体を温める作用があります。
中国最古の医学書である黄帝内経において「五穀為養、五果為助、五畜為益、五菜為充、気味合而服之、以補益精気」という言葉があり、その意味は以下のとおりです。
五穀:麦、黍、稗、稲、豆;穀類は主な食材として五臓を養う。
五果:スモモ、杏、大棗、桃、栗;果物は五臓の働きを助ける。
五畜:鶏、羊、牛、犬(馬)、豚;肉類は五臓を補う。
五菜:葵、藿、薤、葱、韭;野菜により五臓を充実させる。
黄帝内経は紀元前の前漢時代に編纂されたといわれているが、この時代に既に、多くの食材を組合せ、バランスがよく、身体の精気を補うことができ、食材によってそれぞれの臓腑に働くことを認識していました。


五味:酸、苦、甘、辛、鹹(塩辛い)の5つの味に分類されます。
「酸」:収斂、固渋の作用 ;肝、胆、眼に良い。多量に摂取すると膵臓、胃を傷める。その害を消すには甘味を添加する
「苦」:瀉下、燥湿の作用 ;心臓、脳、精神に良く便秘に有効。多量に摂取すると肺、大腸、鼻を傷める。その害を消すには辛味を加える
「甘」:補益、和中、緩急の作用; 膵臓、胃によく、緊張を解き、体力の補強に有効である。多量に摂取すると腎臓、膀胱を傷める。その害を消すには鹹味を添加する
「辛」:発散、行気、活血、滋養の作用 ;肺、鼻、大腸に良い。汗などを発散する作用がある。多量に摂取すると肝、胆、目を傷める。その外を消すには酸味を加える
「鹹」:軟堅、散結、瀉下の作用;腎臓、膀胱、耳に良い。下熱効果と便秘に有効である。多量に摂取すると心、小腸を痛め、血圧が上がりやすいので、害を消すには、苦味を添加する
五行: 木 火 土 金 水
五味: 酸 苦 甘 辛 鹹
五臓 :肝 心 脾 肺 腎
五腑: 胆 小腸 胃 大腸 膀胱
五蓄: 犬 羊 牛 鶏 猪
五果: 李 杏 棗 桃 栗
五穀 :麻 麦 稲 黍 大豆
五菜: 韮 薤 葵 葱 藿
月(旧暦):1~3月  4~6月  -  7~9月  10~12月

土は植物の芽が地中から発芽する様子が元となっていて、万物を育成・保護する性質を表し、各季節の変わり目の最後の月である。

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